十和田湖に魚がいない理由とは?:透明すぎるカルデラ湖の謎に迫る

十和田湖魚がいない理由 沼ナレ

「十和田湖には魚がいない」という話を耳にしたことはありませんか?

青森県と秋田県にまたがるこの美しい湖は日本有数の透明度を誇りますが、確かに魚の生息数が少ない湖として知られています。ですが、実際には一部の魚は生息しています。

ではなぜ十和田湖では自然に魚が増えにくいのか?

それには湖の成り立ちや水質、さらには湖からの流出河川の特徴が大きく関係しています。本記事では十和田湖に魚が少ない理由を詳しく解説していきます。

 

十和田湖に魚がいない3つの理由

理由①:カルデラ湖特有の地形の影響

カルデラ湖特有の地形の影響

十和田湖は火山活動によってできたカルデラ湖です。火山の噴火によって形成された巨大なくぼみに水が溜まり、湖が誕生しました。

カルデラ湖の特徴として、周囲が急峻な外輪山に囲まれているため外部からの流入河川が少ないことが挙げられます。

通常、川が流れ込むことで湖に魚が自然に入り込み繁殖することができます。しかし十和田湖の場合はこうした流入河川がほとんどないため、魚が自然に入り込むことが困難なのです。

理由②:透明すぎる水質(貧栄養湖)

透明すぎる水質(貧栄養湖)

十和田湖のもう一つの特徴は極めて高い透明度です。この美しさの理由は湖が「貧栄養湖」であり、水中の栄養分が非常に少ないことにあります。

十和田湖の水には窒素やリンなどの栄養塩類がほとんど含まれていません。そのため植物プランクトンが育ちにくく、それをエサとする動物プランクトンの数も限られてしまいます。

透明すぎる水質(貧栄養湖)

結果として魚のエサが不足し、食物連鎖が成り立ちにくい環境になっています。こうした要因が重なり、十和田湖では魚が自然に繁殖しにくくなってしまいます。

十和田湖には、唯一の流出河川として奥入瀬渓流があります。この奥入瀬渓流には「銚子大滝」と呼ばれる落差約7メートルの滝があり、この滝が天然のダムのような役割を果たしています。

理由③:魚の遡上を阻む奥入瀬渓流の「銚子大滝」

銚子大滝

通常は川の流れを遡上して湖に魚が入ってくることもありますが、この滝があるために魚が湖へ上がってくることができません。

つまり、十和田湖は魚が外部から供給されるルートが極端に少ない湖なのです。

何度も失敗?ヒメマスが定着するまでのエピソード

「魚がいないなら放流すればいいじゃないか」と考えるのは自然なことです。

実際、明治時代に和井内貞行(わいない さだゆき)という人物が十和田湖にヒメマスを放流しようと試みました。しかし最初は何度も失敗します。

その理由は十和田湖が極端な貧栄養湖であり、放流された魚が生き延びるだけのエサがなかったからです。和井内氏は資金が尽き、家族にも反対されながらも何度も試行錯誤を繰り返しました。

最終的には、放流する稚魚の育成環境を整え、十分に成長した個体を放つことで成功しました。現在、ヒメマスは十和田湖の名物として定着し、多くの観光客が訪れるきっかけにもなっています。

魚は少なくても実は豊かな生態系があった!

魚は少なくても実は豊かな生態系があった!

十和田湖には魚が少ないものの、実は魚以外の生き物は多く生息しています。

湖底には小型のエビや特殊な水生昆虫が生息し、水草も貧栄養環境に適応した種類が繁茂しています。魚の生息数が少ないため、これらの生物が捕食されにくく独自の生態系を作り上げています。

つまり「魚がいない=生き物が少ない」というわけではなく、むしろ魚がいないことが他の生物にとって好都合な環境を作っているという見方もできます。

他のカルデラ湖の魚事情も調べてみた

日本には十和田湖以外にもカルデラ湖が数多く存在します。例えば…

芦ノ湖(神奈川県)

芦ノ湖(神奈川県)

人工的に放流されたニジマスやブラックバスが生息しています。

摩周湖(北海道)

十和田湖と同じく貧栄養湖で、ほとんど魚がいません。

摩周湖(北海道)

このように、カルデラ湖はその特殊な環境のため魚が少ない傾向があります。ただし人間が放流を行うことで、魚が定着する湖もあることが分かります。

まとめ

十和田湖に魚が少ない理由は、流入河川の少なさ・貧栄養湖の性質・銚子大滝の存在など、複数の要因が絡み合っていました。

しかし魚がいないことは決してマイナスではなく、その特殊な環境が湖の透明度の高さや独自の生態系を守る要因にもなっています。

ヒメマスの放流が成功したように、人間の関与によって生態系が変化することもありますが、十和田湖の本来の姿を知ることで、この湖の魅力をより深く理解できるのではないでしょうか。

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