「崎陽軒のシュウマイって不味くね?」と感じてこの記事にたどり着いた方へ。その感想、正直ちょっとわかります。
でもこの記事は、あえてその意見を否定している立場から書いています。なぜあなたが「まずい」と感じたのか。
それは味覚の問題ではなく、もしかしたら「知らずにズレていた」ことによる誤解かもしれません。
横浜で育った筆者が、全力でその“違和感の正体”を整理しながら本当の「崎陽軒」とは何かを伝えていきます。まずいと思ったあなたも、ぜひここからもう一度味わってみてください。
この記事のタイトルに違和感を感じないなら、すでにヤバいです
「シュウマイ」って普通に書いてたら、ちょっと危ないかも
この記事のタイトルには、あえて「シュウマイ」と書いています。ですが、その表記に何の違和感もなく読んでいたとしたら…、それはすでにズレの入口かもしれません。
崎陽軒の正式な商品名は「シウマイ」です。
シュウマイと表記すること自体は間違いではありませんが、崎陽軒の“味”や“文化”を語るときに、その表記にピンと来ないまま話すのは、ちょっと危ういと思うのです。
「シウマイ」という字面を見て何か感じたことがあるかどうか。そこには味覚だけでなく、“接してきた文化”が表れてくる気がします。
これは上から言いたいわけじゃなくて、「あ、この人は横浜文化を知ってるな」っていう一種の目印でもあるんです。
違和感を感じずに「まずい」と断じてしまうのは、実は最初から見えていなかったものが多いということかもしれません。
「シウマイ」って何?なぜ崎陽軒はこの表記を使ってるのか

「シウマイ」という独特な表記には、ちゃんと理由があります。これは創業者・野並茂吉が「シュ」の発音が苦手で、訛って「シウマイ」と言っていたことが由来とされています。
さらに、中国人スタッフが「中国語の発音に近くて良いですね」と言ってくれたことで、あえてそのまま商品名として採用したというエピソードがあります。
また、当時はカタカナの「シ」が現在ほど明確に発音されていない時代背景もあり、これが“懐かしさ”や“昭和感”を残す一因にもなっています。
さらに「シを隠すと“ウマイ”になる」という遊び心もあって、崎陽軒は今なおこの表記を守り続けているのです。
たかが3文字、されど3文字。そこに込められた文化と意志を、少しでも感じてもらえたらうれしいです。
「まずい」と言う前に、あなたが食べたものを思い出してほしい
「正直、崎陽軒ってあんまり美味しくなかった」と感じた方に、まず確認していただきたいのが、「そのとき食べたのは何タイプのシウマイでしたか?」という点です。
崎陽軒のシウマイには複数のバリエーションがあります。たとえば、昔ながらのシウマイ、日持ちのする真空パックタイプ、さらには冷凍品など、それぞれに設計思想が違うのです。
特に真空パックは利便性重視で、風味が落ちてしまうのは避けられません。それを“代表作”だと思って評価してしまうと、本来の味を知らずにジャッジしていることになります。
もちろん、それを選んだあなたが悪いとは思いません。ただ、せめて「どれを食べたか」だけは思い出してほしいのです。評価を下すには、それが最低限のスタートラインになると私は思います。
「まずい」と感じた人のほとんどがハマってるワナ
真空パック=保存重視。味は別モノ
真空パックシウマイも、れっきとした崎陽軒の正規商品です。だからこそ「これが本物の味だ」と思ってしまうのも仕方がないかもしれません。
しかし味に違和感があったとしたら、なぜなのかを少しだけ考えてみてほしいのです。
崎陽軒のシウマイは保存料などの食品添加物を一切使っていません。そのぶん、真空処理や加熱工程で風味が落ちてしまうのは避けられないことです。
つまり味の違いは企業努力の不足ではなく、あくまで「余計なものを入れない」という企業姿勢の結果なのです。
それでも真空パックを出す理由は、贈答や保存のニーズがあるからです。
その中でギリギリまで“味”を残そうとしている姿勢こそ、評価されるべきだと思います。「落ちた味」は“弱さ”ではなく、“こだわりの証拠”です。
「肉汁ドバッと系」と比べちゃいけない理由

最近では、コンビニや中華料理店などで「アツアツの肉汁系シュウマイ」が人気を集めています。食べると口の中にジュワッと広がる肉汁が特徴で、インパクトもあり、満足感も強いですよね。でも、崎陽軒のシウマイは、そもそもそういうタイプの食べ物ではないのです。
崎陽軒は「冷めても美味しい」ことを前提に設計されています。そのため、肉汁を閉じ込めるよりも、時間が経っても味が崩れないことを優先しているのです。ホタテのうま味を活かした具材は、温度に左右されず、安定した美味しさを届けてくれます。
肉汁たっぷり系と比較して、「こっちは物足りない」と言うのは、前提が違う商品を並べていることになります。それぞれ目的が違うからこそ、比べるなら条件を揃えて判断していただきたいと思います。
「冷めてもうまい」って、そういう設計なんです
「冷めてもおいしい」と言うのは簡単ですが、それを実現するのは本当に難しいことです。崎陽軒のシウマイは、その難題に真正面から挑んできた商品です。
駅弁という文化の中で、移動中に食べることを想定し、時間が経っても美味しい状態をキープするように設計されています。
たとえば皮がベチャつかないこと。脂が白く固まらないこと。味がボヤけず、口に入れたときに素材の風味がきちんと感じられること。
そのすべてが「冷めてもおいしい」ためにチューニングされているのです。
派手な味やパンチの効いた演出がない分、最初はインパクトに欠けるかもしれません。
でも食べ終えたあとに「また食べたい」と思わせるのが、本物のうまさではないでしょうか。崎陽軒のシウマイは、まさにそういう存在なのです。
大人になって気づいた、シウマイのうまさ
グリーンピースが苦手だったあの頃
子どもの頃、私は崎陽軒のシウマイがあまり好きではありませんでした。理由はシンプルで、グリーンピースが乗っていたからです。
青臭さや見た目の主張が強くて、味の邪魔をしているように感じていた私は、いつも上に乗ったグリーンピースを外してから食べていました。
でも大人になってからふと思ったのです。「あのグリーンピースって、味だけじゃなくて見た目のアクセントだったのか」と。
ホタテベースの淡白な味にほんのり青みのある豆の香りが重なることで、全体の印象が引き締まる。あれは単なる飾りではなく、設計された“ワンポイント”だったのだと気づいたのです。
あの頃は、それを理解できるほど味覚も経験も成熟していなかっただけだったと思います。子どもには見えなかったものが、大人になって見えてきた。シウマイは、そういう気づきをくれる食べ物でした。
横浜駅で食べた駅弁がすべてを変えた

学生時代、旅に出る前に横浜駅で買ったシウマイ弁当を寝台列車の中で食べたことがありました。それが私にとって「シウマイってこんなにうまかったのか」と思えた最初の瞬間でした。
車内で食べたそのシウマイ弁当は、もちろんホカホカではありません。でも冷たいままなのに不思議なほど味がしっかりしていて、ごはんも副菜も、シウマイを中心に調和しているのが伝わってきました。
ひとくちごとに「計算されてるな」と思わされる、そんな弁当でした。
あのとき初めて、シウマイは単体で主張する料理じゃなく、「弁当の中で完成される一品」なんだと理解できました。
熱々のインパクトではなく、冷めてからのうまさで勝負する。これは「温度に左右されない、駅弁文化の回答」なんだと、腹の底から納得したのを覚えています。
派手じゃないけど、ずっと残る味だった
シウマイは決して派手な食べ物ではありません。口の中で爆発するような肉汁もないし、ニンニクのパンチが効いているわけでもない。初見では「ちょっと地味だな」と思っても不思議ではないのです。
でも不思議なことに、数日経ってからふと「また食べたいな」と思う。そういうタイプの食べ物って、意外と少ないんですよね。
強い印象は残さないけど、気づけば心に居座っている。シウマイって、まさにそんな存在だと思います。
「思い出せる味」って、人生の中で案外少ないものです。どこで食べたか、どんな状況だったか、そのとき誰といたか。
そういったものと一緒に記憶される食べ物こそが、“日常の本命”なんじゃないでしょうか。私にとって、シウマイはそのひとつです。
シウマイって、誰にもちょうどいい食べ物だった
脂っこくないから、お年寄りにも子どもにもウケる
崎陽軒のシウマイは脂っこさが少ないのが特徴です。いわゆる「ジューシー系」とは違い、ホタテのうま味をベースにしながら、あくまでもすっきりとした後味に仕上がっています。
そのため、脂や香辛料が苦手なお年寄りにも、小さな子どもにも非常に食べやすいのです。(ただしグリーンピースが嫌いなお子様を除く笑)
実際、私も祖父母への手土産に迷ったときには、必ずと言っていいほどシウマイを選びました。食が細くなっても、シウマイなら数個ペロッと食べられる。そんなシーンを何度も目にしてきました。
子どもにとっても弁当に入れやすく、一口で食べられる手軽さが魅力です。(ただしグリーンピースが嫌いなお子様を除く笑)
「重くないのに、しっかり味がある」。これって世代を問わず受け入れられる最強のバランスなんじゃないかと思います。シウマイは実はとても優秀な“家庭のおかず”でもあるのです。
真空パックでも喜ばれるって、すごくない?

真空パックは、昔ながらのシウマイに比べれば風味が落ちるのは事実です。でも贈り物としてはこれ以上ないほど実用的で、安定して喜ばれます。
横浜土産といえばシウマイ。その手軽さと信頼感が、真空パックに詰まっているのです。
常温で持ち運べて、冷蔵も冷凍も不要。しかも電子レンジで簡単に温めることができる。
お年寄りでも操作に困らず、誰でも食べられる。たとえ保存のために少し風味が犠牲になったとしても、それを補って余りある利便性があると思います。
なにより「安心してあげられる」ってすごく大事なことです。贈り物は相手に喜んでもらうためのもの。
真空パックシウマイは“うまさだけ”を基準にするんじゃなく、“届けやすさ”という視点でも崎陽軒の底力を感じさせる商品だと私は思っています。
クセがない=最強。だから贈り物にも選ばれる
クセがない食べ物って、時に“印象が薄い”なんて言われることもあります。でも人にあげるものって、逆に“クセがない”ってめちゃくちゃ強みなんですよね。
アレルギーや好みの心配が少なくて、誰に渡しても安心して食べてもらえる。これって実はすごいことなんです。
シウマイは濃すぎず薄すぎず、香辛料も控えめ。だからお年寄りから子どもまで、相手を選ばずに手渡すことができます。実際、手土産やお中元に選ばれる理由もそこにあると思います。
そして不思議なことに、「これ、クセがないからね」と言って出されたものが、あとから「また食べたいね」と言われる確率は高い。
誰にでも寄り添う味。それこそが、贈り物としてのシウマイの強さなのではないでしょうか。
まとめ

崎陽軒のシウマイは、いわゆる“わかりやすい派手さ”はありません。
でもそこに込められているのは、誰にでも食べられるようにと緻密に設計された、静かなやさしさとバランスです。
「真空パックと出来たての味は違う」。それだけでも知っておけば、判断はきっと変わるはず。
崎陽軒のシウマイは駅弁として生まれ、冷めてもおいしくあることを使命として作られました。それを“熱々の肉汁系”と同じ土俵で比べて「まずい」と断じるのは、ちょっと違う。
その食べ方、そのシーン、その設計思想を含めてこそ、シウマイという食べ物の奥行きは見えてくるものです。
だからこそ、お願いです。「まずい」と言い切る前に、どうか一度、“昔ながらのシウマイ”を横浜で食べてみてください。
それでも合わなければ、それは好みの違い。でも、もしその一口で、「あ、これか」と思ってもらえたなら、この記事は報われます。
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