河岸段丘という地形をご存じですか?
知ってるけど、学校で習った「河川の侵食と地盤の隆起で形成される」という説明では、なぜ階段状になるのかよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、河岸段丘がどのようにして作られるのかを、オリジナルのイラストでステップごとに詳しく解説します。
また河岸段丘と普通の谷の違いや、もし段丘面全体が水没した場合にどうなるのかといった、普段は考えないようなシナリオについても触れていきます。
この記事を読むことで、河岸段丘の成り立ちや特徴を分かりやすく理解できるだけでなく、地形を通じて自然の壮大な力を感じることができるでしょう。
河岸段丘のでき方とは?:河岸段丘ってなに?
川が作る不思議な階段、河岸段丘とは?
河岸段丘(かがんだんきゅう)は、川沿いにできる階段状の地形のことを指します。これは川の流れが地面を削り(浸食)、その後に地盤が持ち上がったり川の流れが変わったりすることで生まれます。
例えば川が広い範囲を流れているとき、氾濫原(はんらんげん)という平らな土地ができますが、その後地盤がゆっくりと隆起すると、川はさらに深く地面を侵食し、新しい低い川底が作られます。
このとき昔の川底が高い位置に取り残されるため、階段状の地形ができるのです。
氾濫原と河川敷はどう違うんですか?
河川敷は川幅の範囲内で洪水時には必ず浸水するエリア。一方で氾濫原は長期間の氾濫と堆積によって形成された、川沿いの広範囲の地域(川幅外を含む)を指すんだ。
河岸段丘の面白さは、過去の川の流れや地形変化の痕跡を目で見て確かめられることです。これらの地形は、何万年もの時間をかけて作られるため、自然の壮大な歴史を感じさせます。
普段は意識しないかもしれませんが、身近な場所にも河岸段丘が意外と多く存在しています。
例えば、新潟県津南町や群馬県沼田市といった有名スポットが思い浮かびますが、埼玉県秩父市や神奈川県相模原市など、都心からアクセスしやすい地域にも河岸段丘は広がっています。
- 新潟県魚沼郡津南町(公式HP)
- 住所:新潟県魚沼郡津南町一帯
河川:信濃川
段数:9段程度
観光:空の展望台(マウンテンパーク)
秩父市や相模原市の河岸段丘は、完全に都市に溶け込んでしまっていますね。
よほど大規模な段重ねじゃない限り、河岸段丘は見過ごされていることの方が多いんだ。
自然が作り出す地形アート、河岸段丘!
例えば段丘面の広さや段丘崖の高さは、川の流れが変化した証拠です。過去に川がどれだけ広い範囲を流れていたのか、地盤がどれだけ持ち上がったのか、段丘を見ることで分かります。
その姿はまるで大自然が地面に彫刻を施したよう。河岸段丘の形状や形成過程は、自然が作り上げたアートともいえます。
さらに、河岸段丘は地質学的な意味だけでなく、私たちの生活にも影響を与えています。段丘面は平らで洪水のリスクが低いため、住宅地や農地として利用されることが多いのです。
一方で地質や植物などの研究対象としても重要であり、地形や自然を学ぶ上での貴重なフィールドになります。
河川が隆起した場所だから地質を学ぶ場所としても適してるんですね!確かにチバニアン周辺も河岸段丘だってガイドさんが言ってましたね。
そうだね。河岸段丘としての規模は小さいけど、チバニアンは河岸段丘で地球の歴史が学べる代表的なスポットだね。
- チバニアン(公式HP)
- 住所:千葉県市原市田淵付近
河川:養老川
段数:1〜2段程度(詳細不明)
観光:チバニアンビジターセンター
河岸段丘のでき方とは?:河岸段丘ができる仕組み
どうして川が階段を作るの?
川が流れるとき、その水の力で地面を削り、谷や川底を形作ります。この侵食の(削る)力は地形や気候の変化に合わせて強くなったり弱くなったりします。
また川の流量が増える時期(大雨や雪解けの時期)には、川は深く削られますが、流量が少ない時期には削る力が弱まり、周囲に土砂が堆積することもあります。
さらに地盤がゆっくり持ち上がる(隆起する)と、川は再び下に向かって地面を削り始めます。これが繰り返されると、昔の川底が高い場所に残り、現在の川底との間に「段差」が生まれるのです。
河岸段丘のでき方を学ぶ上では、まずはこの「河川による侵食」と、地盤が隆起した場合に河川が下に向かってまた削り始めるということを理解する必要があります。
なんか河川ってモグラみたいな性格なんですね。河岸段丘のでき方について、順を追って教えてください。
河岸段丘のでき方を3ステップで解説!
「河川による侵食」と「地盤の隆起」を理解できたので、次は河岸段丘のでき方について細かく説明していきます。
河岸段丘も、基本的にこの「河川による侵食」と「地盤の隆起」という2つの要素が繰り返されることで形成されます。
ステップ1: 川が地面を削る(浸食)
川は流れるだけでなく、その水の力で地面を削ります。特に流速が速い場合は、川底だけでなく川沿いの土や岩も削り取る力があります。
この「浸食」の力によって川底が深くなり、周辺の地形に谷ができていきます。
ちょっと、「しょぼい川」って、、川に失礼ですよ。。
いや、壮大な河岸段丘の規模に比べると、それを作ったのが意外に小さな川だったって事を説明するために「しょぼい川」って架空の名称をつけてるよ。
ステップ2:川が地面を広範囲に削る(浸食)
学校では「河岸段丘は河川の侵食と地盤の隆起によって形成される」と教えられることが多いですが、この説明では不十分で、分かりづらいと感じる方もいるかもしれません。
そうなんですよ!「河川の侵食と地盤の隆起だけで、なぜ階段状になるの?」って疑問に思ってました。
その答えの鍵は、かつての河川が「自由気ままに流れていた」ってことなんだ。現代人の我々にはなかなか想像もつかないけどね。
現在の河川は治水が進んだことで流路が規則的に制御されていますが、昔の河川は決して「礼儀正しく」流れていたわけではありません。
昔の河川は広い範囲を削り、氾濫を繰り返すことで現在の河岸段丘の基礎が作られたのです。
あ!この時点で少し階段っぽくなってきましたね!
そうだね。ただこの程度の階段はあまり珍しくないかな。ここへさらに地盤の隆起が起きると、段重ねが進んで河岸段丘が完成するんだ。
ステップ3:地盤が持ち上がる(隆起)
地盤がゆっくり持ち上がると河川は現在の川底を削り続け、やがてさらに低い場所を流れるようになります。
ここで大切なのは、河川が新しい流路を削っていく際に氾濫原は削られず、そのまま高い位置に取り残されるという点です。
なるほど。「河川の侵食」「地盤の隆起」「河川の反抗期(洪水)」が繰り返し発生することで階段状になっていくってことですね?
その通り。どんな河川でも「侵食」と「反抗期(洪水)」はあるんだけど、これに「地盤の隆起」が加わると階段状の地形が完成するんだ。
ステップ3:古い川底が取り残される
地盤の隆起や川の流量の変化によって、新しい川底が徐々に形成されます。
この過程で、氾濫原が削られずに高い位置に取り残されることで「段丘面」が生まれます。このようにして、階段状の地形が作られるのです。
つまり「①削る」「②広げる」「③上げる」を繰り返すことによって河岸段丘が作られるということだね。
なお、洪水が起きると広いエリアが削られる一方で、浸水したエリアは堆積物などによって平らになります。しかしまた河川の侵食によって削られていきます。
これでやっと河岸段丘の形になりましたね!でもあの「しょぼい川」さん、また着々と地面を掘ってるんでしょうね。
そうだね。川底がコンクリートで固められようが、河川が侵食しようとすることに変わりはないよ。あと河岸段丘の各部名称、テストに出るから覚えておいてね。
河岸段丘のでき方とは?:よくある質問に答える
普通の谷と河岸段丘の違いってなに?
谷と河岸段丘はどちらも川によって作られる地形ですが、その特徴や見方に違いがあります。普通の谷は、川が地面を削り続けることでできる「現在進行形」の地形です。
例えば、山間部を流れる川が岩を削りながら作る深いV字谷がその典型です。
一方で河岸段丘は現在の川沿いに残る「谷」から、氾濫原が取り残された「段丘面」まで全てを含む地形です。
つまり河岸段丘の一番下の段は、今も川が削り続けている「谷」と言える部分が含まれますが、その上の段丘面は過去に川が作った痕跡として残ったものです。
もし大規模な洪水が発生したら階段はどうなる?
河岸段丘は現在の川沿いにある「谷」から、氾濫原が取り残されてできた「段丘面」まで全てを含む地形です。
段丘面は長い年月をかけて河川の侵食と地盤の隆起によって形成されているため、通常の洪水で浸水することはなく、そのため河岸段丘の美しい景観が洪水によって破壊されることはありません。
しかし、もし想定を超える大洪水が発生し、河岸段丘全体が浸水してしまった場合はどうなるのでしょうか?
洪水が発生したら浸水したエリアは堆積物などによって平らになっちゃうんですよね?
河岸段丘全てが水没するような事態は、日本全体が沈没するほどの規模と言えるので現実的ではないけど、あくまで仮想のシナリオとしてシミュレーションしてみよう。
河岸段丘全体が水没する状況をシミュレーションします。
段丘面全体が水没するには、以下のような条件が想定されます。
・大規模な地盤沈下
・想定を超える大洪水
・津波や海面上昇
河岸段丘全体が水没した場合、次のような地形の変化が想定されます。
・段丘面の浸食
・新たな堆積物の形成
・地形のリセット
河岸段丘全体が水没した場合のシミュレーション結果が出ました。
河岸段丘全体が水没した場合、次のような結果が想定されます。
・河岸段丘が平坦地になる:段丘面と谷底の差が埋まり、階段状の地形が消失する。
あー、やっぱりそうなっちゃいますよね。。
45億年と言われる地球の歴史の中ではこのレベルのことも起きていたかもしれないけど、あくまで架空のシナリオということでご理解ください。
まとめ
河岸段丘は、川の流れや地盤の動きが織りなす、自然が作り上げた壮大な地形アートです。
その階段状の形状には過去の川の流れや氾濫、そして地盤の隆起といった長い年月をかけた地形形成の記録が刻まれています。
普段は意識することの少ない河岸段丘ですが、実際には私たちの身近な場所にも多く存在しています。
それらを観察することで、自然がどのように地形を形作り、私たちの生活環境に影響を与えてきたのかを実感することができるでしょう。
この記事を通じて河岸段丘の仕組みや魅力が少しでも伝わり、自然への興味や探求心が深まれば幸いです。
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