台風の名前が日本だけダサい理由:日本独自のトホホな事情とは?

台風の名前が日本だけダサい理由 沼NEWS


「台風ヤギ」「台風コイヌ」…。ニュースで目にするたびに「え、なんでそんな名前?」と感じたことはありませんか?

この記事は、台風の名前に違和感を持った方に向けて、そもそも台風に「名前」がつく仕組みから、日本だけ名前が浮いて見える理由、そしてその背景にある文化的・歴史的事情までを掘り下げます。

台風名に関する国際ルールや各国の命名傾向、日本があえて「ダサい名前」を選んだ可能性、さらには筆者による新時代に相応しい台風名のネーミング案まで幅広くご紹介。

この記事を読めば、モヤモヤしていた日本の台風名のナゾがスッキリします。ちょっとした話のネタにもなる内容なので、どうぞ気楽に読んでみてください。

 

日本人には馴染みが薄い、台風の国際的な命名ルールとは?

台風には「台風○号」以外に国際標準の名前(アジア名)がある

「台風の名前」と聞いてピンと来る人は、意外と少ないかもしれません。日本では「台風12号」「台風6号」などのように、発生順に「番号」で呼ばれるのが一般的です。

ニュースや天気予報でも、ほとんどの場合この「○号」が使われていて、それ以外の呼び名を耳にすることはほとんどありません。しかし実は、すべての台風には「もうひとつの名前」が付けられています。

これは「アジア名」と呼ばれ、国際的に台風を識別するための共通名称です。

台風の番号とアジア名の付け方 | 気象庁
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台風はいくつもの国や地域にまたがって移動します。そのため、各国で別々の呼び名を使っていたら、「どの台風の話をしているのか」が分からなくなってしまいます。

そのため、アジア・太平洋地域では「ひとつの台風に、共通の名前をつけて呼び合う」という国際ルールが設けられているのです。

アジア名は14ヶ国が提出した140個のリストから順に使われる

アジア名は14ヶ国が提出した140個のリストから順に使われる

このアジア名制度は、2000年に開始された「台風委員会(WMO/ESCAP)」の取り組みとして導入されました。

加盟しているアジア・太平洋地域の14の国と地域が、10個ずつの名前を事前に提出し、合計140個のリストを作成。その順番に沿って、発生した台風に名前が付けられていくというルールです。

ポイントは、新しく台風が発生するたびにその都度名前を考える」のではなく、決められた順番に従って使われる(命名される)という点です。

2025年4月時点のアジア名一覧
2025年4月時点のアジア名一覧(途中省略)

140個のリストを最後まで使い終わったら、また1番目に戻るというループ制が採用されています。

名前のテーマは国によって異なり、動植物、神話、地名、伝説、抽象概念など、提出国の文化や価値観が色濃く反映されているのも特徴です。

日本が提出した10個のアジア名が異常にクソダサい件(今回の問題点)

日本が提出した10個のアジア名が異常にクソダサい件(今回の問題点)

さて、ここからがこの記事の本題です。この140個のアジア名のうち、日本が提出した10個だけが、どうも異様に「浮いている」のです。以下が日本が提出した10個のアジア名です。(2025年4月時点)

  1. コイヌ(Koinu)
  2. ヤギ(Yagi)
  3. ウサギ(Usagi)
  4. カジキ(Kajiki)
  5. コト(Koto)
  6. クジラ(Kujira)
  7. コグマ(Koguma)
  8. トケイ(Tokei)
  9. トカゲ(Tokage)
  10. ヤマネコ(Yamaneko)

いずれも言葉そのものが変というわけではありません。「コイヌ」も「ウサギ」もかわいらしい響きのある言葉ですし、「カジキ」や「クジラ」なども日本では身近な動物として馴染みがあります。

ただ、これが「強力な台風」の名前だと考えると違和感が出てきます。

猛威を振るう台風に「台風コイヌ」「台風ヤギ」といった、ほんわかした名前がついていることに、違和感を覚える人は少なくありません。

名前の印象と台風の現実があまりにもかけ離れている、それが今回のテーマです。

 

日本のダサい台風名、他国と比べてどうなのか?

他の国はどんなアジア名を出しているのか?

他の国はどんなアジア名を出しているのか?
この画像は台風委員会に参加している国を意味するものではありません

台風の名前には、その国の文化的背景や自然観が色濃く反映されます。

日本がかわいらしくも中性的な名前を多く提出している一方で、他の国々では神話・歴史・動物の象徴性・自然現象の迫力などを意識した、より「意味を持った名前」が選ばれています。

ここでは、日本との違いが特に際立つ3ヶ国をピックアップしてご紹介します。

カンボジア|神聖な動物と伝説をモチーフに

カンボジア|神聖な動物と伝説をモチーフに

カンボジアが提出した台風名には、「ダムレイ(象)」や「コンレイ(伝説の少女の名前)」など、その土地の自然や文化にまつわる存在が選ばれています。

いずれも見た目のインパクトよりも意味や背景に重きを置いたネーミングで、日本のように「ただの小動物の名前」だけを出している国とは、名づけの方向性が根本的に異なります。

中国|神話と自然を結びつけたパワーワード

中国が提出した名前は、「ウーコン(孫悟空)」「フェンシェン(風神)」「マーロウ(雷の母)」など、神話や自然現象を直接連想させるネーミングが多いのが特徴です。

中国|神話と自然を結びつけたパワーワード

言葉の響きにも迫力や勢いがあり、災害のイメージとリンクしやすい設計になっています。文化的な威厳や物語性をもつネーミングが多く、「台風=恐れるべき力」というメッセージ性も感じられます。

アメリカ|人名と自然現象を織り交ぜた多様なスタイル

アメリカ|人名と自然現象を織り交ぜた多様なスタイル

アメリカが提出した台風名には、「マリア」「フランシスコ」などの人名のほか、「バリジャット(沿岸地域)」「アイレー(嵐)」など、自然現象や地形を反映した言葉も含まれています。

一貫したテーマというよりは、わかりやすく印象に残る名前を選んでいる印象で、人名から抽象概念までバリエーションの豊かさと明確なインパクトを意識した命名センスが感じられます。

なぜ日本だけが異常にダサい台風名を提出したのか?

なぜ日本だけが異常にダサい台風名を提出したのか?

では、なぜ日本は「コイヌ」「ヤギ」「カジキ」などの、“可愛らしいけど台風らしくない”名前を提出したのでしょうか?

実はこれ、気象庁が公式に「名前の選定方針」として発表している内容にヒントがあります。以下、気象庁による台風名選定の基準からの引用です。

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140個のアジア名のうち日本からは、星座名に由来する名前10個を提案しています。星座名を提案した理由として、特定の個人・法人の名称や商標、地名、天気現象名でない「中立的な」名称であること、「自然」の事物であって比較的利害関係が生じにくいこと、大気現象である台風とイメージ上の関連がある天空にあり、かつ、人々に親しまれていることが挙げられます。(気象庁HPより引用)
*************

この方針をそのまま受け取ると、つまり「誰にも文句を言われない」「無難」「イメージが柔らかい」という条件が揃った結果、星座と小動物路線にならざるを得なかったというわけです。

 

日本が「無難でダサい」台風名を選んだ理由(筆者考察)

日本人的優しさによる配慮説

日本人的優しさによる配慮説

なぜ日本だけが「台風コイヌ」「台風ヤギ」といった、どこか可愛らしい名前を採用しているのか。そこには日本人特有の「他人に配慮する文化」が背景にあるのではないかと筆者は考えています。

たとえば台風に「強そうな名前」や「神話に登場する神様の名前」をつけた場合、それを聞いた被災地の人々が不快に思ったり、「神が災害を起こした」というニュアンスを含んでしまうリスクがあります。

実際に「台風スサノオ」や「台風アマテラス」といった名前が使われたとしたら、不謹慎だと受け取ったり、不快に感じる人も少なくないでしょう。

だからこそ日本は、「誰も傷つけず」「主張しすぎず」「馴染みがありそうな存在」として、星座や小動物 といった「やわらかい印象の名前」を選んだのではないかと考えています。

戦時ネーミングとの関係を背景とした「あえて選ばなかった」説

戦時ネーミングとの関係を背景とした「あえて選ばなかった」説

旧日本海軍では、戦艦・巡洋艦に旧国名や山の名前、駆逐艦には天象・気象・海洋名等、そして空母には瑞祥動物(鳳・龍・鶴・鷹)といった、まさに「台風にぴったりな名前」が多く使われていました。

翔鶴(空母)、金剛(戦艦)、高波(駆逐艦)など、そのまま使っても台風として違和感のない名前ばかりです。

しかし、それらが台風の名前として採用されていないのはなぜか?ここには、日本があえて慎重な選択をした背景があるのではないかと、筆者は考えています。

というのも、台風委員会に参加する14カ国の中には、かつて日本が軍事的に影響を及ぼした国々も含まれているためです。

もし「台風翔鶴」や「台風高波」といった名前が使われた場合、戦争を経験した世代の中には、軍艦とのつながりを想起し、不快感や過去の記憶を呼び起こされる人がいても不思議ではありません。

つまり日本は強そうな名前を使う選択肢がなかったわけではなく、あえて中立的で柔らかい印象をもつ「星座名」や「小動物名」に振り切った可能性があるのではないか?と考えられます。

 

台風の名前って、そもそもダサくていいのでは?(筆者考察)

災害の名前に「かっこよさ」を求める必要はあるのか?

災害の名前に「かっこよさ」を求める必要はあるのか?

ここまで日本の台風名が「ダサい」と言ってきましたが、そもそも台風に「かっこよさ」って必要なんでしょうか?

台風は、誰にとっても迷惑な存在です。農作物をダメにし、イベントを中止にし、旅行の予定も狂わせる。まさに嫌われ役の代表格です。

台風名を「強そうにする」ことで、災害の深刻さを知らせるという考え方もあります。たしかに「これから何か大変なことが起きるぞ」と印象づける意味では、一定の効果はあるでしょう。

でも日本は、そもそもその路線をとっていません。注意喚起どころか、どこか「かわいらしさ」すら漂う名前ばかりです。

だったらいっそもっとダサくしてしまえばいい。みんな台風なんて嫌いなんだから、笑えるくらいのダサさで、むしろ距離を取ってしまった方がいい。そんなふうに、筆者は思います。

筆者が勝手に提案する「究極にダサい日本版アジア名(10個)」

筆者が勝手に提案する「究極にダサい日本版アジア名(10個)」
2025年4月時点のアジア名一覧(途中省略)

アジア名は原則として140個のリストを繰り返し使用していきますが、加盟国の要請などにより定期的に入れ替わっています。

日本が提出したアジア名は星座名に由来する10個ですが、気象庁の見解によればその選定基準は以下の通りです。

  • 特定の個人・法人名、商標、地名、天気現象名でない「中立的な名称」であること
  • 自然に関係し、利害が生じにくいこと
  • 台風とイメージ上の関連があり、かつ親しみやすいこと
  • アルファベット9文字以内で発音しやすく、他国語で不快な意味を持たないこと

ただ「星座」という縛りを守ってしまうと、さすがに面白い名前が出てこないのも事実です。

なので今回は上記の選定条件はしっかり守りつつ、筆者の勝手な発想で「究極にダサいけど許されそうなアジア名」を10個考えてみました。

もちろんおふざけ半分ではありますが、気象庁さん…もしよろしければ採用、ご検討ください。

  1. チョイモレ(Choimore) …日常語(生活)
  2. パイセン(Paisen) …業界用語(人物呼称)
  3. クモハ(Kumoha) …鉄道用語(形式名)
  4. メタボ(Metabo) …医療・健康用語
  5. シースー(Shisu) …業界用語(食べ物)
  6. タツカワ(Tatsukawa) …一般人名(人物)
  7. ジャージ(Jyaji) …衣類名(ファッション)
  8. ネバツキ(Nebatsyki) …擬態語(感触)
  9. シャコタン(Shakotan) …車用語(族車文化)
  10. ゾッコン(Zokkon) …恋愛用語(感情表現)

 

まとめ

台風の名前が日本だけダサい理由

台風名にダサさを感じていた人にとっては、その裏にある国際ルールや文化的な背景、そして日本がなぜ「ダサい名前」を選んだのかという経緯を、少しでも知るきっかけになったのではないでしょうか。

かわいらしく見える日本の台風名も、実は「誰も傷つけない」「利害が生じにくい」など、多くの条件をクリアした「中立的な選択」だったという点で、一概にセンスの問題だけでは片づけられない事情も見えてきました。

それでも、「コイヌ」や「ヤギ」といった名前に物足りなさを感じてしまう人がいるのも確かです。

だったらもう、もっとダサくて笑える名前を付けてしまえばいい。この記事で紹介した「究極にダサいアジア名」たちが、少しでも台風に対する「どうせ来るなら笑いたい」精神につながれば幸いです。

編集後記

編集後記

今回の記事では「台風の名前が日本だけダサい」と話題になる理由を掘り下げてみましたが、正直なところ、私自身もこの記事を書くまで台風に名前がついていることすら知りませんでした。

調べていく中で感じたのは、「日本だけがダサい」と言われがちですが、実はどこの国もけっこう似たようなもので、それぞれが自国語で聞くと「それはちょっと…」という名前をつけていたりします。

たとえば韓国の「ノグリー」は韓国語でタヌキという意味ですが、響きだけ聞くとちょっとカッコよく聞こえる。でも韓国の人からすれば「台風タヌキって何よ!」って思うはずです。

ノグリー

つまり「ダサさ」は翻訳されないけれど、誰もがどこかで感じているものなんじゃないかと。だからもう、台風の名前にカッコよさを求める必要なんてないのかもしれません。

むしろ日本は、台風がどれだけ危険かも、どう備えるかも国民全体に共有されている国。だったら「誰も傷つけず、誰も気に留めない」ような名前でいいんじゃないかとすら思えます。

そう考えたとき、「どうせならもっと振り切ってダサくしたっていいのでは?」という気持ちが芽生え、勝手に「もっとクソダサい台風名10選」を考えてみました。

もしかしたら、次に来る「台風チョイモレ」にクスッと笑える未来があるかもしれません。

 

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